「半世紀以上“日本の顔”の役割を担ってきたホテルオークラだ(別館で営業中)。最後の3日間、大切な思い出を抱える多くの人がやってきた。親孝行しようと 背伸びして部屋を予約した家族。結婚式の記憶を温める老夫婦。和の伝統と西洋のモダンが融合した内装を目に焼きつける建築家。」(引用先:NHKドキュメント72時間

ホテルオークラは、仕事やお付き合いで何度か訪問した経験がある。宿泊する機会はなかったが、高級なホテルという印象をずっと持っていた。多くの人の出入り一つ一つに人生ドラマがあるように見える。そんなドラマを今回の番組は私に見せてくれた。

思い出、願望、目標、多くの人に精神的な影響を与えるホテルオークラ

ホテルはただ滞在するだけの場所であるのだろうか。 私は、ソニーで海外マーケティングの仕事をしている時にマリオットのResidence Innを使っていた。ホテルオークラのように高級な滞在場所ではない。一般のビジネスマンが長期滞在する時に使う。ホテル側との接点は、求めない限りあまりないレンタルルームのような感じだ。

今回のホテルオークラは、人と人との接点から価値を生み出し、人生のドラマを作ってきたように思えた。多くの利用者が、最後のホテルオークラを名残惜しんでいた。人生の出会いの場所であったホテルオークラ。いつかこのホテルに泊まれるぐらいの人物になりたいという若者。

ホテルオークラ本館は50年の歴史を持つ。この50年間にどれほどの人が人生の歴史を書き込んできたか。国内外の人たちがホテルオークラが醸し出すオーラ的な雰囲気と目に見えない「おもてなし」を感じ取っている。そこには、ホテル運営の哲学とそれを支える社員の弛まない努力があったのだろう。

ホテルは日常生活で必要な物全てがある宿泊場所とある登場人物は述べていた。泊まるだけの場所ではないと言うことだ。高級なホテルであればあるほど滞在者のニーズを満たす環境が求められる。高いだけの理由がそこにある。

亡き旦那さんとのお見合いの場所を見納めにきたシニアの女性。顔を見るだけで何か心に感じる。顔はその人の人生を表すという。人生の歴史が自分の顔に隠されているからだ。心の思いが表情となって現われる。

老舗ホテルオークラに別れの挨拶をするために宿泊する人たち、食事をする人たち、雰囲気を再度味わうために来た人たち。彼らの顔にそれぞれの思いが見えていた。多くの人が名残を惜しみ、過去の思い出を思い浮かべ、最後のお別れをしてドアを出て行く。

結論

老舗ホテルオークラの見えない価値と資産がこんな所に出る。ホテルと人間の関係は、宿泊だけではない。心と心の接点とつながりなのではないか。