労働生産者の人口が減少してきている今、シニア労働者にも雇用の目が向き始めている。問題は、シニア労働者と会社のニーズでミスマッチがある。企業側は、単純労働者としてシニア労働者を見ている傾向がある。現在、直ぐに雇用される分野に「介護」と「建築」がある。

シニア労働者には、元会社員が多い。キャリアと教養があると極端に違った分野での仕事に入っていけない。

自分で自分に合った仕事を探す事が出来ないシニアは、生活困窮者にならない限り人の嫌がるつらい仕事には就かない。私自身も自分のキャリアや技術が生きる仕事であれば、給与が安くてもその会社で働くだろう。

シニア労働者の実力を起業で試す

シニア労働者に普通の会社員と同じ労働を求めるのは難しいかもしれない。老いから来る体力の衰えや新しい事への適応や学習で時間がかかる。それ故に適度の仕事量と労働時間を求めるシニア労働者が多い。

日本の会社は、まだ、シニアが組織の中で快適に働けるルール作りが出来ていない。それ故、今すぐ自分たちのニーズを満たす仕事を探すには、自分たちで仕事を作り上げるしかない。それが出来なければ、社会がオファーする仕事で我慢するしかない。

元の会社で自分に自信がある仕事をやってきた人ほど自分にプライドがある。高学歴で会社の管理職を経験している人が多い。一度、会社を離れると本当の自分の実力を見せつけられる。自分の名前では仕事が寄ってこない。教養も経験もキャリアもあっても世間はあなたを冷たく取り扱う。

自分の仕事を創出する

私は男性であるのでシニアの女性に関してはよく分からない。シニア女性が仕事を作り出すには、自分の周りにある女性独自のネットワーク内でニーズを探すしかないだろう。シニアの女性であれば、頼みやすい仕事がきっとあるはずである。

私が知っているシニア女性はNPO団体組織の庶務をしている。組織に入りやすい職業として庶務がある。そのときに採用されやすい技能としてパソコン操作や経理事務の経験や能力があると良い。

あと、話し相手を探している老若男女が大勢いる。男性よりも女性の方が、「話し相手サービス」をやりやすいのではと時々思う。電話で時間単位で料金を請求する仕組みである。検索で 話し相手サービス を探してみると話し相手サービスビジネスがリストされる。傾聴する人とおしゃべりしたい人をマッチングするビジネスモデルである。

60歳から70歳代のシニアは、まだ、体力がある。チャンスがあればもうひと働きが出来る。だが、そのチャンスを見つける事が出来ていない。他人の雇用を当てにするよりも自分を雇用する事を考えて見るべきではないか。

他人にまた雇用されても解雇されるリスクが高い。解雇されたら元の木阿弥である。自分の雇用をコントロールできていない。若い頃から自営業をされているシニアと会社で雇用されてきたシニアでは自分の仕事に対する考え方が違う。

元会社員は自分の本当の実力を知らない。自分の実力を試す他流試合をしていないからだ。会社組織内での自分の実力であって現実の社会の中での実力ではない。頭で分かっていても心の中では分かっていない。これが心身ともに分かってくる時は、定年退職後、または、50歳代でリストラされた時である。

若い頃から自営業や会社経営をしていたシニアは現実の厳しさを知っている。変なプライドや教養、そして、キャリアはない。現実が求めているニーズを見つけてビジネスを作り出す。そんな強さがある。

では、どうしたら良いのか?

会社を離れたシニアの強みは自由な時間を沢山持っている事である。これからは必要な情報を自分で求めていく必要がある。会社にいた頃は会社が色々な情報を知らせてくれた。ビジネス社会とつながっていると自動的に自分の仕事に関係する情報がやって来る。

生きた情報は生きた人間から得るのが一番良い。死んだ情報は書籍や既に公開されたニュースメデイア情報である。生きた情報を得るには自分が興味を持っている分野で活躍している人たちが大勢集まっている組織や団体に顔を出す事である。

自分に合った仕事を創出するための第一ステップは関心を持っている分野でアクティブに活動している人たちの組織に参加する事である。その人たちのビジネスモデルを研究すると良い。マネするのではなく研究して自分独自のビジネスモデルを作り上げる。

「シニア(60歳から70歳代)の仕事はあるが、自分のプライドが邪魔になる」ようなシニアは、自分のプライドで起業に挑戦すべきではないか。起業して自分のプライドがどれほどの価値とメリットをもたらすかテストマーケティングしてみることだ。

年齢が65歳を過ぎれば雇用してくれる会社の数は激減する。つまるところ、自分で自分を雇用する起業しかなくなる。どうせ、そうなる年齢ならば、自分のリソースとプライドで自分の実力を試してみることだ。自分が築いた仕事仲間やクライアントの関係をうまく使えば何か新しい発見があるかもしれない。

起業した私もプライドがあったが、そのプライドは起業で何も役に立たなかった。役に立ったのは経歴をホームページに書いた時だけ。どこどこの大企業で何々をしてきたという経歴である。その経歴がそのまま仕事には結びつかないが、お客への自己アピールとしては役に立つ。私のプライドはそれぐらいしかの価値しか無かった。

シニア起業の落とし穴を知っておく

今、65歳ならば起業して働ける年齢は75歳までかもしれない。実質働けるのは10年間である。65歳と75歳の体は体力と精神面で大きな違いがある。70歳の声を聞き始める頃に体力がガクンと落ち込む。長時間働くのが辛くなる。それに伴って気力も落ち始める。徐々にいつ引退しようかを考え始める。

健康面のリスクが年齢ともに増えていく。起業した当時の体力と気力を維持できない。健康に障害が起きれば、仕事は出来なくなる。やり直しはほとんど無理。自分のビジネスを引き継いでくれる息子や娘がいるならば、早いうちにビジネスに慣れて貰う必要がある。

シニア起業をするときは事前にビジネスを閉じる年齢を決めておくことである。体力が続かなくなったら、その時点で引退する決断をする。

結論

自分の実力を知らないシニアは起業で自分の実力を試す必要がある。自分が思っている実力は自分の世界で価値があるが、現実の社会では誰も認識してくれない。定年退職後に再就職先を探す時、自分の実力を面接時に説得できない現実を知る。会社が求めるニーズと自分が提供するものがマッチングしない。

元の職場では実力があったと自認していたが、外に世界ではその実力を証明できない。面接官にこう言われるかもしれない。「そんなに自分に自身があるならば、なぜその実力で起業をしないのか?」

自分の実力に自信がある方は一度起業に挑戦してみることである。現実を経験して新しい生き方が見えてくる。頭の中で思い込みで現実の世界を泳ぐのではなく、地面に足をつけてチャンスを拾うしかない。