「シニアの品格」著者 小林一雄の本をある人から頂いた。280ページほどの本で対話形式の物語である。「シニアの品格」とは?を読者に伝えようとしている本である。定年退職間近のエリート会社員と88歳の素朴な老人との間で交わされる会話にシニアの生き方を垣間見る。
定年退職を控えたシニアにとって老後の生活は不安でいっぱい。定年退職者も残りの人生をどのように過せば良いか分からないでいる人が多い。籠から解き放された鳥になると自分が抱いていた価値観に疑問を抱き始める。「老人の品格」は、ゼロから自分独自の人生の価値観を作るための参考書である。
「シニアの品格」は人生の本質とは何であるかを考えさせる
定年退職間近のシニアは、会社を離れた生活に不安と期待を抱いている。現状維持のライフスタイルを一番望んでいるが、会社はそれをよしとしない。周りの社員も「定年になるシニア社員」という目で見る。60歳、65歳という人生の節目で今まで一生懸命社会の枠で働いてきた自分の人生を見直させられる。
定年退職を楽しみにしているシニアは、やりたい事がある人たち。次の人生目標が目に見えている。定年退職後は、やりたくて、やりたくて仕方がない事がやっと出来るようになるという喜びで定年退職を待ち望んでいる人たち。
一方で、会社のためだけに自分の人生を捧げてきたシニアは、今までの自分の人生価値観について定年退職後、再検討を要求される。「シニアの品格」は、そんな境遇にいる人に人生の本質とは何であるかを考えさせる。迷える羊、羅針盤を失った船がこれからの人生をどのように生き抜いていくかを考える良い機会をこの本は与えている。
自分に足りないものを再認識させた「シニアの品格」
私の人生は51歳の時に会社を卒業した人生である。自分の手で生活が出来る強さを持ちたいと思い起業した。当時、私には自分で起業という一線を踏み越える勇気がなかった。自分が居た環境は、もう、起業するしかない環境に自分を追い込んでいた。運命は面白いもので追い込んだ私に起業のためのビジネスの種を与えてくれた。同時に、誰か(運命の神様なんだろう)が私の背中をそっと押してくれたため一線を踏み越えられた。
私にとって「シニアの品格」は、自分に足りないものを再認識させた。自分の弱みと強みは裏と表の関係であり、自分に正直に成り自分なりの人生を弱みと強みから作り出す。弱みはいつも意識している。意識しているがそれを改善しようとする事を避けている。
「シニアの品格」で登場するシニア人材59歳の東条(ある会社の元ニューヨーク支店長)と88歳の奥野老人との対話から物語が始まる。奥野老人が開いている「古井戸よろず相談所」に東条がシニア人材としての悩みを持ち込む。東条は、奥野老人との会話から自分の人生について考えさせられる。
会話の中で「気の置けない仲間」という話が出る。私には、残念ながら「気の置けない仲間」がいない。シニアになると新しい友人を作るのが難しくなる。会社にいれば同僚という仲間が居たが、組織を離れると同僚も居なくなる。残るのは自分一人と言う事になる。
「気の置けない仲間」を作ると老後の生活に潤いを与えてくれる
著者は、「強みの多様性」という要素が若者とシニアを結びつけると語っている。どんな人にも1つや2つ強みを持っている。その強みを自覚しているか居ないかの問題だけである。若者の強みと弱みをシニアの強みで補完するとつながりが生まれる。当然、相性もあるが、お互いが触れ合う時にシニアの品格(姿勢と考え方、そして、人生観)が大きな役割を果たす。
第9の対話『約束』の中でこんな言葉があった。
- 「絶望のすき間に沢山楽しみが隠れている」
- 「一寸した幸せに喜べると言う体質を身に付ける」
奥野老人の言葉である。私は、なぜか、この2つの言葉が頭に引っかかっている。人生は苦しい中に幸せを見出せる。老後の生活は今まで出来た事が出来なくなる生活だが、幸せを喜べる機会がもっと身近にあることを見出せる。
結論
私の老後は「一寸した幸せに喜べると言う体質を身に付ける」生活にしたい。実は私の妻はこの体質を生まれながらにして身に付けている。一緒に生活をしていて面白い、楽しい、という感覚を私に与えてくれる。英語の表現に、Fun to be with! 言葉がある。一緒にいると楽しい!という意味である。「人生の品格」という本は自分たちの老後生活をどのようにすべきかを示唆している。