給与が現在の60%まで下げられ同じ仕事を65歳までするという選択がある人が、起業という選択を考えている。彼は、人生100年ということを考慮して65歳以降の仕事を心配していた。今の会社が65歳まで雇用を延期してくれるのはありがたいが、待遇面と65歳以降の雇用で不安があるという。
どっちみち、65歳になれば雇用延長されたシニアは雇い止めになるのでは。それが見えているので起業という選択を真剣に考えたいという。彼は今63歳である。63歳のシニアが今から起業をしようとすると色々なハンディが肩にのしかかって来る。
そんな彼に私は4つのことを助言した。
目次
シニア起業で重要な4つのこと
起業して12年間が経つと気力も情熱も薄れ始める。ビジネスの屈曲を経験しながら、老いていく自分を見ると12年前と同じエネルギーをビジネスに投入できるか分からない。私は、起業体験をしているのでそう思うのかもしれない。これから起業するシニアは、何を自分のビジネスに求めるかだ。
お金だけを目的にしないこと
お金儲けだけを目的にすると起業は100%1年以内に失敗する。そんな現実の事例を何人もの起業家に見ている。起業の動機をお金儲けだけにしないこと。
起業準備での助言は、これからやろうとするビジネスが自分の心の琴線に響いているかどうかである。在り来たりの事業で起業するならば、やらないほうが良い。新しい社会のニーズを感じ、そのニーズを満たせるのは自分だけだと感じる事業ならば挑戦する価値がある。
新しく立ち上げるビジネスは立ち上がるまで時間と忍耐を要求する。お金だけを求める起業家はそのビジネスモデルの将来性を見ないで売上の数字だけで判断し、止めてしまう傾向がある。
どんなビジネスも初めから大儲けできるものではない。辛抱強くそのビジネスの将来性を夢見ながら情熱でやり続けることで成功を見る。
ビジネスモデルをA4用紙一枚に3つ書く
事業計画を起業の参考書を見ながら皆作るのだが、現実の世界ではあまり意味を持たない。事業計画で作った数字は100%当たらない。願望を計画書に描いただけになる。そんな事業計画書に時間を投資するならば、もっと役に立つことに自分の時間を使ったほうが良い。事業計画書はA4 1枚の白い紙にビジネスモデル(収益モデル)を3つぐらい書いてそれをテストマーケティングしてみることである。
一つづつビジネスモデルを実行して当たりが少しでもあれば、面白くなる。もっと追求すれば、もっとビジネスが広がるかもしれないという好奇心と楽しさが見えてくる。自分のアイデアでお金を稼げるという感激が気力と情熱にエネルギーとなって行く。
一つのビジネスモデルをテストマーケティングしながら事業計画のドラフト版を作る。2つ目のビジネスモデルで事業計画の欠点を修正する。3つ目のビジネスモデルで事業計画書を完成させる。
自分が見つけた独創的なニーズを満たすビジネスでなければ面白くない
気力と情熱は自分が起こすビジネスに惚れ込んでいないと高まらない。自分だけしかこのビジネスをやっていないという独創的な起業であるならば、面白い体験が出来る。仮に失敗してもその経験に価値が残る。人生は一度限り。やった人しかその結果は分からない。
既に市場が出来上がっていて競合他社が沢山いるビジネスはシニアが参入すべき市場ではない。誰も開拓をしていないブルーオーシャン市場のビジネスを開拓すべきである。常識的に考えてビジネスにならないという市場に新しいニーズを見つければ、そのニーズを満たして売上を立てる仕組みを考えることである。
典型的な事例がウォータービジネスである。水を有料で売れるとは日本では誰も考えていなかった。日本は水が綺麗で水道水もそのまま飲める数少ない国であるからである。そんな国で水を有料で売るなんて常識外れであると誰もが思っていた。
今はその常識がどこかに消えてしまった。水は有料で売るものになっている。今の常識を疑って新しいニーズを見つければ、独創的なビジネスモデルが生まれてくる。
テストマーケティングを行う予算と時間を確保する
起業はまず起業という体験をすることから始まる。未経験の世界に一歩足を踏み込んでどんな世界なのかを経験する。この段階では、ビジネスの成功、失敗の評価はいらない。起業経験こそが成果になる。失敗経験であればあるほど、学ぶべき貴重な経験を得る。本格的な起業に走る前に一つのビジネスモデルでテストマーケティングを行う。
経済的な深傷を負わないテストマーケティングをプランする。予算と期間を限定することでビジネスモデルに脈が有るか、無いかを探れる。3つのビジネスモデルがあれば、3回テストマーケティングが出来る予算と時間を確保すること。1000万円あれば、300万円x3回でやれる。予算がなければ、最低でも1回のテストマーケティングを行うことが肝要である。
多くの起業家は、ビジネスモデルを一つしか考えない。そのため、そのモデルがうまくいかないとそこで終わる。3つあれば、他の可能性を追求できる。追求しながら失敗経験を次のビジネスモデルの実施に応用する。事前の失敗経験から落とし穴が見えてくる。次のテストマーケティングではその落とし穴を埋めたプランが出来るので成功する可能性が高くなる。
結論
シニアが起業を準備するにこの4つが重要。(1)お金儲けだけで起業しないこと、(2)ビジネスモデルをA4用紙一枚に3つ書く、(3)自分が見つけた独創的なニーズを満たすビジネスでなければ面白くない、(4)テストマーケティングを行う予算と時間を確保する。