70歳になる人間が100歳以上生きたいと思うだろうか。70歳の声を聞くと「もう、あなたは立派な老人ですよ!」と世間から見られる。孫たちからは「爺(じいじ)」という声が聞こえる。80歳、90歳、100歳になってもそれは変わらない。今の生活を続けたいという欲求が誰にでもある。気が付けば、90歳になっていた。ふと、周りを見たら友人、知人、伴侶が消えていた。他界してしまったのだ。

私を知っている人たちは子供や孫しかいなくなる。子供がいなければ、誰もいなくなる。自分の存在は社会から見てNobody!になる。日本は65歳以上の単独世帯率が約32%ぐらいになる2020年統計)。長生きすれば幸せになるとは限らない。

私達は運命として「死ぬために生きている」。でも、肉体の寿命で生きて楽しめる時間が制限される。

日本の健康寿命2019年(令和元年)のデータでは、

  • 男性:約72.7歳
  • 女性:約75.4歳

健康寿命と平均寿命の違い

  • 平均寿命: 生まれた時から死亡するまでの平均的な寿命。
  • 健康寿命: 健康な状態で生活できる期間。

健康な状態で生活ができる年齢が長ければ、孤独が続く。介護される状態で老人ホームで生活するならば、他界する時期が迫ってくる。ピンピンコロリで他界することを誰もが願うのはこんな理由かもしれない。

長生きを求めるならば孤独を覚悟する必要がある!

老後の生活は、「孤独」をどう楽しむかで幸せ感が変わる。一人で何かに没頭し、喜びを感じる生活のリズムがあれば自分が一人になっても孤独を感じる苦痛に悩まされないのではないか。自分たちの世代の人間が他界していくと他の世代の人達との交流がない老人たちはLonely Crowd(孤独な群衆)になる。

問題の解決方法は2つある。

若い世代の人たちとの交流を深めて自分より先に他界しない友人、知人を増やす

当たり前なことだが、そのような努力をすれば孤独な群衆から少し離れられるのではないか。年配者が自分よりも若い人たちと交流を深めるには、共通の趣味があると年齢を忘れた付き合いが可能になる。そんなお付き合いを60歳以降から築く努力を始めれば80歳、90歳になった頃にその恩恵が生まれてくると私は思っている。

ただ、出来る人とできない人がどうしても生まれる。

69歳の私自身、親しい友人、知人が誰もいない。その寂しさを仕事や他の組織での活動で感じないようにしている。まだ、普通の生活が出来る体と健康がある。介護支援を受ける体では自由な生活が自分でできないし、行動範囲が自宅周辺や老人ホームに限定される。もし、足腰が大丈夫であればもっと他の人達との接触や交流が出来る。

孤独は他の人との接触が少ないと自分一人の世界に入り、そこで感じる感覚である。亡き義父が喜んでいたことは孫の私の次男が時々亡き義父に会いに来てくれたことである。60年という歳の差があったが、義父は孫と一緒に食事をするだけで気分が良かった。他人とは違い親族であるので気が楽になる。自分の娘(家内)の子供であるので小さい頃から彼の成長を見ていた。

ただ、若者は自分のことで忙しい。祖父と一緒にいる時間は限られている。寂しさを解消する解決にはならない。ボーナスのような喜びになる。最終的に自分の意志で孤独を楽しむことを探すしか無い。自宅や老人ホームでのひとり暮らしはそんな問題を抱える。

同年代が多い元気な老人たちが集まる老人ホームでの生活を始める

同年代の人のほうが共通の体験、時代を経験しているので話が通じやすい。老人は、今のことを話すよりも昔を回顧するおしゃべりを楽しむ傾向がある。介護サービスでデイサービスがあるが、何度も顔を合わしていない限りその場限りの接点でしか無い。亡き義父はデイサービスに行きたいとは言っていなかった。頭が普通の人以上にしっかりして高学歴のため、普通の老人たちと話が合わなかった。

知的な老人であった。当時63歳の私と世間話をしても話がぶれない。最新の社会動向の情報を吸収していた。それが、国内だけでなく国外に精通している。知的な老人は元気な老人が集まる老人ホームに行っても彼と類似な老人を見つけるのが難しい。そんな問題が見える。90歳代で知的な生活を送っている老人は非常に少ない。何処かで妥協しなければ、同世代の老人が集まる場所に行っても孤独から逃れる事は出来ない。

やはり、老後の生活は「孤独」をどう楽しむかで幸せ感が変わる。

老人ホームで生活している義母を見ていると自分の将来の姿を見る

義母は93歳になる。車椅子生活を最近始めた。食欲はあるが、体が変形し始めている。典型的な老人の姿になった。背中が丸く曲がり、背筋が一直線にならない。肉体はどんどん衰えてきている。耳が遠くなり、認知症も進行している。まだ、会話ができるのが幸い。文字も書ける。認知症は面会をするうえで酷くない。

ただ、100歳まで長生きできるか疑わしい。運悪ければ、数年で他界するかもしれない。昨年、伴侶の夫(義父)が他界したので精神的に影響がある。老人ホームは死んで行く老人のための豪華船である。死に向かってゆっくりと進んで行く。老人ホームは介護が必要な老人にとって必要不可欠であるが、幸せを感じる生活は出来ない場所になる。私は老人ホームや介護される生活に入る前に他界したい。

健康寿命を伸ばせれば、工夫次第で孤独を追い出して楽しい老後を暮らせるチャンスが有る。

結論

  • どんなに仲の良い友人、知人がたくさんいても自分が長生きをして行くとこの世から消えて行く。
  • 老後の生活は「孤独」をどう楽しむかで幸せ感が変わる。
  • 若い世代の人たちと交流を、年齢を感じさせない趣味を見つける。