横浜駅周辺にある定食屋でランチを食べていると時々4、5人のシニア男性たちが昼間からビールを飲みながら食事をしている。お酒が入るとどうしても声が大きくなる。聞きたくない話もこちらに聞こえてくる。彼らのおしゃべりは元いた会社組織や同僚の話である。過去を思い出して話のネタにしていた。現在、未来に関係する話題はなかった。

定年退職して暇つぶしに近くにいる元会社同僚たちと「たまには会おうじゃないか!」と言ってランチをしている。定年退職して老後の生活を楽しめていますか?と聞いてみたかった。私の感じでは彼らは明らかに暇な時間を有効に使っていないような雰囲気であった。

周りにいる高齢者を観察していると意欲的に自分の余生を楽しもうとしている老人が少ない。過去の自分の世界を懐かしむ生活よりも今と未来の世界を探求してみるほうが刺激がある老後を暮らせると私は思っている。毎日、新しいことが社会で生まれている。新しいことは刺激を多くの人に与える。

老後の生活は意識して脳を刺激し、体を動かす必要性がある。健康寿命を伸ばすには肉体と精神の両面を刺激する活動が必須になる。暇は健康寿命を短くする。暇ほど苦しく、つまらないものはない。体が不自由になってから、あれをやっておけば良かったとか、例えば足腰の筋トレ運動、を思うシニアがいる。

老後の生活は暇な時間を如何にして有効に使うかという命題を解くためにある。老人ホームの生活になったら益々住む世界が狭くなり、変化が少なくなる。

新しい事をやって好奇心を誘い出す

最近、60歳から80歳代の高齢者たちの間でスマートフォンが広まり始めている。郵便局でもスマホの販売代行をやり始めるほど携帯電話に代わる端末になり始めた。スマートフォンを電話とメールが出来るゲーム機と思えば気が楽になる。スマホは高機能であるが、普通のユーザーがいつも使うのは限られている。

私もスマホを使っている。使用用途は、1)メールの送受信、2)ウエブ閲覧、3)FacebookやLINE、4)YouTube動画の閲覧、そして、5)地図。私は仕事をしているため、スマホ以外にモバイルパソコンをいつも持ち歩いて使っている。スマホの良さは直ぐにどこでも情報にありつける情報端末であることである。 

高齢者にとってスマートフォンは未知の端末機器になる。電車に乗れば、90%以上の乗客がスマホを使って小さな画面に吸い込まれている。何をやっているのだろうかといつも疑問を持っているはず。高齢者にとってスマホは得体の知れない端末。使い方と仕組みが未知の世界。

電車の中でスマホを使っている人はゲームをやっている

スマホをゲーム機と思って使ってみると老人はスマホの世界に入りやすい。電車の中にいる若者、会社員、主婦たちはスマホの中でゲームを楽しんでいる。スマホを電話機としてみる時代は終わった。シニアはスマホに慣れるためにスマホをゲーム端末として使い始めたほうが良い。スマホを触る機会が増えるたびにスマホの多機能に気が付くはず。これは何をする、あれを触るとどうなると言った好奇心が生まれてくる。

新しい事への好奇心は子供の特権ではない。老人にもオープンになっている。スマホの使い方は使う人のニーズ次第である。私はスマホでゲームなんかはやらない。ゲームに興味がないからだ。むしろ、FacebookやLINEでの中人知人たちが発信する情報に興味を持っている。

新しい文明の利器は常に触っていないとそのメリットが分からない。スマホでゲームをやりながらスマホが提供するサービスを学ぶ。分からないことが一杯見つかる。それを息子、娘、孫たちに聞いて学んでいくと心地良い刺激が脳に伝わる。新しいことを学んでいると暇な時間があっという間に無くなる。

ちょっとした好奇心で新しい事に興味を持つ

知らない事を知る事で新しい世界に触れられる。私が使っているスマホ(アンドロイドOS)は、音声入力でウエブ検索をしてくれる。天気などは、音声で答えてくれる。スマホと会話が出来る(iPhoneなど)。自分たちが住んできた世界とは違う別な世界がある事に気が付く。そんな世界に足を一歩入れてみると新鮮な刺激と驚きがある。

私は自炊が出来ない。自炊をやった経験が非常に少ないからだ。独身時代はいつも外食であった。結婚したら、妻が料理を作ってくれる。妻が旅行で家を空けると近くのスーパーで惣菜やおかずを買ってご飯を炊くだけで終わる。料理らしい料理は作れないが、自分で料理ができたら良いなあという願望はある。

家内が月に何回か実家に帰り空き家になった家に新しい空気をいれるときがある。そんな時、何度か自分で回鍋肉を試しに作ってみた。結構うまくできた。それで料理にちょっと興味を持ち始めた。コンビニに行くと男の料理雑誌があるので簡単にできそうな料理を探すことがある。こんな事から好奇心が生まれてくる。 

今は自由にできる時間が作りやすい仕事環境であるので家内が実家に行っている時は自分で料理を勉強しようと思っている。料理の世界は未知の世界。料理の基礎も学んでいない。OJTで家内がいるときにちょっとづつ学ぶしかないかもしれない。時間があれば、無料の料理教室にでも参加しようと思っている。 

自分で好きな料理を作れるようになれば、食べるのも今以上に楽しくなる。腕が上がれば、独立して生活している子供たちに料理を作ってあげたいと思い始める。

自分で出来なかったことをできるようにすると新しい発見がある。ちょっとした好奇心さえあれば、ちょっとした楽しみを生み出せる。

結論

60歳、65歳で会社を卒業した多くのシニアは70歳まではどこかの会社に再就職して老後の生活資金を貯めたいと考える。現実はそれが難しい。誰もが嫌がる仕事で低賃金。それに耐えながら老後の資金を貯めようとする。彼らが知らないことは70歳以降にやってくる体力低下と病気である。老化が激しくなる。

老後の生活で一番価値があるのは「健康と体力」である。老化で体が不自由になるリスクが高まる。お金を使って余生を楽しむには健康と体力がないと楽しめない。60歳代は健康も体力もある。その間にやりたい事をやり終えることである。そして、70歳以降の生活をどのように楽しむべきかを計画する。

70歳以降は今まで好きでやり続けた事に時間とお金を投資する事である。自分の余生を楽しむ時間は限られる。老化で認知症や歩行困難な体になったらお金があっても楽しめなくなる。残った人生の時間を楽しむためにお金を使う。そんな機会が老いとともに少しづつ無くなって行く。