私の兄は71歳になる。自営業の仕事をやめて1年ほど好きな事だけをやってきたのだが、2年を過ぎた頃から暇をつぶす物がなくなってしまった。自宅内で時間を過ごす日々が続いた。その結果、足腰の筋肉を失い始めた。脚力を失ってきたと私に話してくれる。散歩を日課としてきたが、それも止めてしまった。

何をして1日を過ごしているのかを聞いてみたら、

  1. 新聞を読む
  2. テレビを見る
  3. スマホで遊ぶ

こんな返答であった。私の目から見てもつまらない老後の生活をしていると見える。

70歳過ぎに発症する2つのリスク

活発に体を動かして働いていた頃と比べて生活に張りを失った兄の新生活は2つのリスクに直面している。目的を持たないで時間を弄ぶ生活は生活のリズムを崩し、脳を心地よく刺激しなくなる。脳を使わなくなる生活が続くと認知症が忍び寄る。

自宅で生活する時間が増えると体の筋肉をほどよく刺激する活動がなくなる。筋肉を使わなくなる生活が続くと年間1%づつ筋肉が失われて行く。大きな筋肉がある足腰にその症状が出る。足腰の筋肉を失い過ぎると歩行障害に見舞われる。

生きる目的を失うことで認知症が忍び寄る

生きる目的を失い始めると何事において消極的になり受け身体質を身に付けるようになる。積極的に自分の考えで動き出す生活のリズムを作らないと生活自体が受け身になる。働いているときと違って外部からの刺激がすごく少なくなる。脳に十分な刺激が行かなくなり、認知症を発症させる地盤が出来上がる。

自発的に考えて活動するためには生きる目的を見つけるしか無い。それが難しい場合は、何でも良いから社会の中で働くことである。雇用してくれなければ、NPO団体でボランティア活動をすれば良い。半強制的に体を動かす環境に自分を入れ込むことである。

認知症予防は活発に体を動かす活動だけで成り立つ。社会の網目の中に自分を置くことで周りからの刺激の雨が降ってくる。

免疫力低下と筋肉の損失から健康維持が難しくなる

60歳代から筋肉の損失が急激に始まるのだが、歩行障害になるほど筋肉の量が減らない。免疫力も低下するがひどい病気になるようなことは少ない。問題は70歳を過ぎた頃である。私の知人で75歳を過ぎた方は、つまずいて前のめりになり手で支えようとしたが筋力がなくそのまま顔面を地面にぶつけてしまった。 

その結果、3日間自宅で療養することになってしまった。体の筋力の衰えは筋肉量の損失と並行して進む。子供のように機敏に体を動かせなくなる。筋肉が衰えると体のバランス感覚も失い始める。足で踏ん張るということが難しくなる。これから70歳を迎えるシニアは今から筋トレを始めるべきである。

免疫力低下も70歳を過ぎる頃になると体に影響が出やすくなる。今まで経験したことがない病気にかかったりする。体の中で免疫細胞が抑え続けていた病原菌が暴れだす。免疫力の改善がシニアにとって健康寿命を伸ばす手段になる。定期的な筋トレは免疫力を強化してくれる。信じられないかもしれないが、私は筋トレを始めてから風邪で寝込むことはなくなった。

社会から孤立しない環境を作る

70歳以降を元気に過ごすためには社会と繋がる生活を維持することである。仕事をしていれば自然と社会とのつながりを確保できる。仕事仲間との情報交換や交流で今何が起きているかを肌で感じられるようになる。いつも一人で生活する環境から誰かと一緒に何かをする環境に身を置くことで社会からの孤立を防げる。

趣味の同好会、ボランティア活動、アルバイト、地域活動など自分がやれることを今からやることである。自発的に動くことで社会とのつながりが生まれる。自宅で一人受身的な生活をしてはいけない。体を動かして社会と繋がる生活のリズムを作る。それが孤立から逃れる方法である。

結論:

仕事をしていない70歳過ぎのシニアの生活は羅針盤を失った小舟になる。会社という大船から解き離れて自分の力だけで新しい人生設計をしなければならない。大きなリスクは2つある。余生を楽しく生きる目的を失うリスク健康維持が免疫力低下で難しくなるリスクである。

70歳を過ぎると老化現象が激しくなる。足腰の筋肉を失い、歩行障害の初期症状が現れる。散歩だけでは失われた筋肉は回復しない。筋肉の損失は老後の生活で動ける自由を失う。身の自由を失うと普通の生活が維持できなくなる。

精神的にも生きる目的(生きがい)を見いだせないと暇な時間に脳がやられる。認知症が忍び寄ってくる。適度な刺激を絶えず脳に与える生活習慣を身につける必要が出てくる。生きがいがあれば、残された人生の時間を有意義に使える。