先日NPO団体の定例会に参加していた。平均年齢が70歳を越えるシニアが40名以上集まっていた。この暑い時期にだ。70歳過ぎの老人と言って良い人達が神田までやってくる。本来ならば、自宅で冷房を掛けて涼しんでいるべきなのだが。彼らはお金を稼ぐためにNPO団体のメンバーになって働いているのではない。

70歳を過ぎて働き始めるシニアには色々な動機がある。人それぞれのニーズがあるが、NPO団体でビジネス活動をしている老人たちに共通しているニーズがある。 70歳を過ぎると暇で精神的に苦しくなる。自宅でゴロゴロしていても妻に睨まれ居場所がない。

妻はこう言う、「あなた、元気なんだから外で仕事を見つけて働いたら!」と。

70歳を越える年齢と体で出来ることには限度がある!でも、社会で働きたい!

67歳の私は自営業をしている。NPO団体への参画は自分の分野と違っている業界の情報収集と勉強である。一人で自分の専門分野の仕事をしていると孤立する。入ってくる情報も自然と限定されてしまう。刺激が特定分野しかなくなり、バランスが欠ける。精神的な欲求が満たされなくなる。どこかの団体に所属して自分のビジネス環境とは違う世界で違う刺激を得たい。そんなニーズで経営支援NPOクラブという団体に入った。

60歳代は気力も体力もあり挑戦ができるが、70歳過ぎはリスクを考慮する必要がある

体はまだ若い。気力もある。まだ、まだ、社会の中で責任ある行動が取れる。もし、私が70歳を過ぎているならば、一人で起業することを躊躇するかもしれない。

70歳という年齢と老化が進んでいる体はビジネスを展開する上でリスクが生まれる。仮に起業したビジネスが順調に成長してお金を稼げてもビジネスに対する社会的な責任を果たさなければならない。突然、体調を崩して仕事が出来なくなったら誰が仕事を継続するのか。シニアは一人で起業する場合が多いからだ。

NPO団体にやってくる70歳前後のシニアは組織に所属することでビジネス上の責任を回避したいという心理がある。多くの会員は大手商社や大会社のOBであるので生活費には困っていない。彼らが求めているのは社会につながり、世の中の流れの中で生きていたいという欲求である。

70歳を過ぎてビジネスを始める老人は後継者がいないと続かない。会社の仕事を引き継いでくれるパートナーか、社員を雇用するまでは一人で頑張るしかない。そんな責任を70歳過ぎの老人一人が受け切れない。

70歳過ぎのシニアが求めるのはお金ではない

元気なシニアは社会の中で動いていたいという欲望が強い。NPO団体でのビジネス活動はちょうどそのニーズを満たす。お金を稼ぐ魅力ではなく、自分のリソースを活用できる「仕事」と「場」があるということだ。組織で仕事をするので病気で働けなくなっても代わりのメンバーが対応してくれる。

シニアが起業する時はいつも一人だ。後継者のことなんか考えていない場合が多い。ビジネスが上手く立ち上がるかどうかも分からないからだ。その意味合いで一人社長のビジネスに限定され、社会的な責任が小さいビジネスに向かう。コンサルタントビジネスや営業支援などが多い。

起業という道を選択したくないシニアたちはNPO団体に行き場を見出す。自分の経歴や知識が活きる「仕事」と「場」さえあれば、お金などはあまり気にしないからだ。求めるものは、お金ではない。自分の経験と知識が生きる「場所」で社会と繋がっていたいというニーズである。

今日のNPO団体の定例会ではそんなニーズを抱えた老人たちが暑い中をわざわざ神田までやってきた。興味が薄い老人ならば、定例会などに参加しない。70歳を過ぎても社会の中で自分が活きる場を探している老人がいることは確か。ビジネスの責任は取りたくないが、働きたいという人たちである。

結論

  • 70歳を過ぎて起業するシニアは相当の覚悟がいる。ビジネスが上手く行けば、社会的な責任が生まれてくる。遊び半分でビジネスは出来ない。お客様に迷惑が行かない展開をする必要がある。高齢と老いてくる体をどうするかである。
  • 70歳過ぎの老人は社会の中で自分を活かせる仕事と場を探す。お金を稼ぐよりも自分を活かせる場を求める。ただ、ビジネスの責任は取りたくない。
  • お金よりも社会との繋がりを求めるシニアはNPO団体に自分の居場所とやりがいを見つける。