現実を直視してみよう。定年退職後、どのような会社に転職しても必ず振り出しに戻る。そんな現実から逃げられない。最後は年齢制限で転職先がなくなる。会社と言う安全なカゴの中で生活するカナリヤは必ず危険な外に追い出される。自由な世界で自立する生活だけが残される。
カゴの外には自由がある。しばらくお金で不自由しない生活が待っている。今までやれなかった事をやれる。これは確かにそうだ。誰もが最初はそのような生活を送る。至って自然な流れである。問題は時間の経過とともに暇になってくることである。以前のように9am-to-5pmの通勤生活を求め始める。
世の中は自分が求めるようになっていない。雇用する側は自分たちのメリットを優先して雇用する。定年退職したシニアにどのようなメリットが有るのかをすぐに言える準備をしておかないと相手にされない。
退職後は何とかなるだろうと楽観視しない事
1年、2年と好きな事をやって、自宅を中心に遊び始めると社会とのつながりが知らないうちに切れていく。社会とのつながりが切れ始めると会話をする相手が家族(奥さん)だけに限られる。奥さんも相手にしなくなり、一人で何もしない日々が続く。子供たちは、飲み会へ。奥さんたちはお茶会へ。旦那たちは、どこに行くのか?これが現実である。
暇、孤独、認知症になるリスク
仕事がないシニアは毎日が日曜日になる。「暇」な時間をどのように潰すかで日が暮れる生活が待っている。毎日自宅にいると奥さんが苦しみ始める。奥さんのストレスが爆発して、「あなた!何でも良いから自宅以外の場所で暇をつぶして!」と叫びだす。
奥さんから突き放された旦那はますます孤独の世界に追いやられる。昔の同僚、友人、知人に電話して会わないかと誘っても毎日会うことはできない。最終的に一人になる。「孤独」という新しい友人ができる。公園で一人寂しくしているシニアの姿を見かけると明日の自分の姿ではと思い始める。
認知症は一人になり始めて会話がないシニアに忍び寄る。社会からの制約(刺激)がない生活は一見理想的な生活に見えるが活発に生きられなくなる。一人で何かに夢中になり脳に刺激が行っているならば問題は無い。脳を刺激する外部要因がない生活は「私は何もやる事がない! 何か仕事を下さい!」シンドロームになる。
退職後は遊びと仕事を平行線で考え、新しい生活のリズムを創る
社会とのつながりは直ぐには出来ない。自分のライフスタイルを作り上げるために毎日定期的に何かをやるという活動が必要になる。地域の自治会の活動、地域ボランティア、勉強会、社会人大学での授業など色々ある。今までは会社勤めで1日のスケジュールが自然と定まっていたが、会社という枠がなくなった時点で自分が新しい生活の枠を作らねばならなくなる。
自分のライフスタイルを作るには最初の1年、2年で試行錯誤をしながら社会との新しいつながりを築かねばならない。この試行錯誤をしないで赴くまま自由に好きな事だけをやっていると2年後に「暇です。誰か仕事を下さい。」と言う事になる。
そんなシニアに誰も仕事を投げてくれない。社会とのつながりが一度切れるとつながるのが難しくなる。自分でつながれるよう努力をしなければならない。遊ぶ時間と働く時間の配分を考える。社会との接点を維持しながら遊ぶ生活のリズムを創ることである。
私の助言
定期的に何か作業をする仕事を持つ事である。その作業がビジネスであれば良し、野菜作りであっても良し、パートタイムの仕事でも良し、アルバイトでも良い。新しい生活のリズムを作り出す事をやってほしい。それを実践する事で社会との新しいつながりが出来たり、外部からの刺激を受けたりして自分の脳を活性化できる。
私が所属するNPO団体では暇な大手OB社員が中小企業の支援サービスをしている。社会との繋がりを築けて小遣い稼ぎも出来る。NPOで活動することで同年代のシニアたちと顔見知りになり時折飲み会などが開かれる。会話をする機会が妻以外で生まれる。
自発的に何かをやろうとすれば自ずと暇な時間は少なくなってくる。何を今やってみたいかをメモ帳に書き出してみることである。そして、一つづつ実行してみる。
人間はソーシャルアニマルである。社会の中の一員として何か意味あることをしていないと精神的に落ち着かなくなる。
結論
どんな生活が定年退職後のシニアにやってくるのか?想像はできるが実際はその時になってみないと分からないというシニアが多い。定年後すぐに仕事を探さなくても良いだろうと思い、遊び始めるシニアは危ない。社会との繋がりが一度切れると再接続が難しくなる。フルタイムで働く必要がなければ、パートやアルバイトの仕事で新しい生活のリズムを創る方が「暇、孤独、認知症のシンドローム」に陥らない。
退職後の生活はケ・セラ・セラではいけない。自発的に何かを始める活動を試行錯誤で試すことである。やりながら新しい生活のリズムを作り出す。