「毎日、どんなパンツをはいて家を出ますか?」という質問がある。救急救命の蘇生処置として下着は邪魔であるため、ハサミで切り刻む。そんな時、身に付けている下着が医者や看護婦に見られてしまう。

穴の空いたパンツ、汚れた下着、擦り切れたショーツ、女性用ショーツを履いた男性、男性用のパンツを身に着けた女性、色々なプライバシーが突然の出来事で公開されてしまう。老若男女、いつ死ぬか分からない。

「痛くない死に方」の著者 長尾和宏氏(医学博士、長尾クリニック医院長)は講演会の出だしてこんな冗談らしくない問いかけをする。実際の現場では患者のプライバシーはない。個人の趣味趣向が下着に出る。それ故、いつ死んでも恥ずかしくないパンツを毎日履いて出かけることだと彼は言っている。

「痛くない死に方」とはどんな死に方なのだろうか。好奇心で最寄りの図書館でこの本を探した。

痛くない死に方

平穏死、延命死、尊厳死、安楽死、どんな死に方なのか?

癌などの深刻な病気で助かる見込みが少ない時、自分の死に方を考える。どこでどんな死に方を迎えたいのか。私を含めて誰もが自宅で自分の最後を迎えたいと願う。そんな願いに対して現実は8割以上の方が病院で他界していると著者は書いている。

平穏死(自然な死に方)

  • 枯れて死ぬこと。

延命死

  • 溺れて死ぬこと。

本の中でこんな説明がある。「ある葬儀屋さんが言っていた。自宅で平穏死した方のご遺体は軽い。でも、大学病院で亡くなられた方のご遺体はすっしり重いんです。」これは過剰な点滴などで延命治療をした結果であると。

尊厳死

新明解国語辞典によれば、尊厳死の意味は

”人間として、自分の意志で死を迎えること。現在の医療技術では回復が不可能で死を迎えるしかない癌の末期などの場合、延命のための治療行為を断り、自らの意志で死を迎えるとする考え。リビングウィル。 

安楽死

新明解国語辞典によれば、安楽死の意味は

”植物状態にある以前の患者の意志により患者の生命装置を外したり激しい痛みに苦しむ患者に劇薬を投与したりすることによって患者が死ぬこと。普通前者を「尊厳死」、後者を狭義の安楽死として区別するが、後者は未だ必ずしも合法とは認められていない。”

平穏死が出来ない現実

終末期医療で救急車を呼んで緊急入院をすると平穏死が出来なくなるという現実がある。病院は生命維持を続けるために、治療をするため、枯れて死なせることは出来ない。本当に平穏死を望むならば、2つのことを十分考える必要がある。

  1. 自宅で病気や老衰の終末期に緊急入院をするべきかどうか。
  2. 自宅で食べられなくなったらどうするか。

病院に入院すると延命治療が始まる。延命治療が始まると途中で止められない。死ぬまで延命治療が続く。この過程で患者に苦痛が続く。

「痛くない死に方」は自宅で枯れて行くような死に方である。自宅で寝ているうちに老衰でなくなる死に方である。

結論:私が望む死に方

私は枯れるように死にたい。老衰という診断で他界したい。平穏死は最も痛くない自然の死に方である。命が燃えつくように亡くなって行く。体は枯れて生命エネルギーを使い果たして死ぬ。こんな死に方を私はしたい。